息子「まま、ぱぱは?」
私「今ね、お仕事忙しいんだって」
幼稚園生だった長男は旦那の不在を不安に思っていたし、旦那は居なくても、この子たちから父親を取り上げることが心苦しかった。
旦那の母親、義母も今回ばかりはこちらの味方をしてくれて、安易に書類にサインせず、弁護士をつけるようにアドバイスしてくれたりした。
そんなこんなで、時間稼ぎをしていたある日。
日中、自宅で家事をしているとインターホンがなった。
なにやら、すでに玄関前で騒ぎ立てている様子、女の勘というべきかすぐに旦那の不倫相手だとわかった。
長男は幼稚園に行っていたから、抱いていた次男を別室のベビーベッドに移して安全を確保し、洗面所の鏡で気合を入れてから玄関を開けると、掴みかかるように、靴のまま、女が部屋に入ってきた。
ゆうこ「あんた!!いい加減にしてよね!!」
突然の怒号に、わたしはどうしていいかわからずにまばたきをした。
その間に、相手の手のひらがわたしの頬を打った。
私「いった!!なにすんの?!」
ゆうこ「早く離婚届に印鑑押しなさいよ!あんたがサインしないせいで、母子手帳がもらえないのよお!!」
ぐしゃぐしゃの顔で泣き出したその人をわたしはどこか冷静な目で見る。
そして、旦那が言っていたことを思い出す。
彼は、わたしの見た目が好きだと。
目の前で今対峙してる女、視線の高さも同じ、髪の長さも、服装の感じも、メイクの色味も、なにもかも、似ていた。
旦那の見た目が好みだ、という話はどうやら本当だったのだと、こんなところで証明された。
本当に男というのは、つくづくアホだと実感した。
視覚的情報に惑わされて、猿のように盛り、あっちこっちで子種を撒き散らす。
バカ以外の何者でもない。
なにより、見た目が似てても、こんなに理性も品もない、女に騙されるなんてなさけない。
この女、自己中にも程がある。
狂ったように「離婚しなさいよ!」を繰り返すその女があまりに迫ってくるから、距離を取りたくて、肩を押すと今度は大声で泣き出した。
ゆうこ「お腹には赤ちゃんがいるのに!どうして乱暴するの?!流れたらどうするの?!この人殺し!!」
そんなわけのわからない暴言を吐かれて、更に頭に血がのぼる。
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